2019年4月の入管法改正により「特定技能」の在留資格が新たに追加されました。これにより日本は5年間で34万5,150人の受入れを目標に掲げました。

これに伴い外国人の雇用管理に関する資格がいくつかあちこちでつくられたみたいです。今回はその中の一つである、一般社団法人 東京都外国人就労認定機構が実施する「外国人雇用管理士」について解説してみたいと思います。

私は2020年11月28日にこの試験を大阪会場で受けてきました。この時は第2回目の試験でした。まだ新しい資格で過去問も合格率も何もない状況でした。一応公式テキストなるものがありましたが、実際の試験ではテキスト以外の内容も出題されました。

外国人雇用管理士の資格に興味がある方のためにお役に立てればと思います。私の個人的な感想は最後に述べさせていただきます。

外国人雇用管理士試験概要(私の受験当時)

まとめますと

・試験時間:2時間

・試験形式:択一マークシート方式

・試験会場:東京(受験者定員187名)大阪(受験者定員55名)福岡(受験者定員38名)

・受講料:9,900円(税込)

・合格発表:令和3年1月15日(金)

【参考図書】

 実は試験を申し込んだのは11月14でした。急いでAmazonで公式テキストなるものを注文し、手元に来たのが11月17日ということで、試験まで2週間を切った状態でした。

 テキストはこちらです。

 何とか2回通読しました。内容はほとんどが労働基準法を始めとした労働関係法です。入管法はほんの僅かで、7割が労働関係法、1割が入管法、2割がその他といった感じでした。

 ちなみにこの「外国人雇用管理士」という資格、2019年にできた民間資格で、2020年の5月に第一回試験が行われたばかりです。まだできたばかりの資格ということで、試験に関するリアルな情報は一切ありません。前回の試験で何人合格者が出たのか?試験に合格できるボーダーラインはどれくらいか?どんな問題がでるのか?(過去問も一切ありません)といった感じです。当時は年2回の開催と謳われていましたが、2021年の第三回試験の試験概要には年に1回開催となっていました。【試験概要はこちら】

【試験問題のボリューム】

 問題は2時間で四肢択一問題を50問解きます。私は見直しも含めてほぼ2時間まるまる使い切りました。30分以上前に全問解き終えて、早々と退席する方もいましたが、私にはなぜこんなに早く解答が終えられるのか不思議でした。

【大阪会場での受験者数】

 今回大阪会場での受験者の定員は55名でしたが、実際の受験者数は、私を含めて16名しかいませんでした。実際申し込んだ方はもう少しいたみたいですが、当日の欠席者も数人いました。

【問題の難易度】

 正直言いまして、ほとんどが労働関係法の問題になりますので、今回はじめて勉強する機会を得た私としては、僅か2回の通読ではなかなか内容を落とし込めておらず、難しく感じました。

 入管法に関しても、まさかの「外交」「公用」の在留資格についての問題が出されビックリしました。というのも、実際の実務においてこの2つの在留資格に出会う可能性はおそらく限りなくゼロに近いはずです。こんな問題を出してどうするのだろうかと、大変疑問に思いました。(ちなみに私は、名古屋入国管理局に届出済みの申請取次行政書士です)

 「特定技能」のために作られた一般社団法人、資格といっても過言ではない資格ですが、「特定技能」に関する問題は無かったような気がします。

 もう一つ特筆すべきは「個数問題」の多さです。「個数問題」とは、「正しいもの(誤っているもの)はいくつあるか?という問題です。ご存じの方も多いと思いますが、「個数問題」は、ひとつひとつの「肢(選択肢)」に関して、正しいか誤っているかの判断を求めてくるもので、知識の正確性が要求されます。今回の私のようなうろ覚え状態のレベルでは非常に厳しいのです。まだ2019年にできたばかりのこの資格には「過去問」が存在しません。「個数問題」がこんなに出題されるとは思ってもみませんでした。

【公式テキストだけで合格できるか?】

 内容的には公式テキストだけでも合格はできると思います。が、入管法に関しては簡単で基礎的なもので良いので、知識の補充は必要になると思います。「再入国制度(みなし再入国制度含む)」に関する問題が今回出ましたが、公式テキストには載ってなかったと思います。逆に個人的には絶対出るだろうと自信満々だった、「休日・時間外労働の割り増し賃金関係の問題」が全く出題されなかったのは、非常に理解に苦しむところです。

 ちなみに問題は回収され、持ち帰ることはできませんでした。

【まとめ】

 合格発表までの期間は、受験者数のことを考えると、「なぜそんなに時間がかかるんだ」と思わざるを得ない、なんと年が明けた、2021年1月15日でした。私自身あまり手ごたえの無かった試験でしたが、「不合格だった場合もう一度受験するか?」と訊かれたら、答えは「ノー」です。9,900円の受験料は高すぎますし、特にどうしても取らなければいけない資格でもありません。ただ労働関係の法律を勉強するいい機会にはなりました。これは非常に大きいです。

 とは言うものの、せっかく高い受験料を払い、交通費をかけて大阪まで行って受験したのですから、できることなら合格を頂きたいところです。

 そして結果発表。これはメールで合否が送られてきました。結果は「合格」でした。

 合格後は一般社団法人 東京都外国人就労認定機構の講習を受けて登録することで「外国人雇用管理士」を名乗ることができるということです。ちなみに私は登録講習を受講しませんでした。登録講習会の費用は39,800円(税込)でした。名称独占資格ですので独占業務もありません。現時点では将来有望な資格かどうかは全く見当がつきませんでしたので、しばらくコロナの情勢もみながら、様子見といったところです。

あと一つ、どうしても納得いかない点がありましす。それは「試験直前対策講座」なるものが、文字通り試験直前に東京のみで行われていました。この講習を受けると、試験の出題範囲のうち、第40問~第50問のうち、5問が免除されるというものです。参加費は12,980円(税込)です。これはかなり公平性を欠いたものであると言わざるを得ません。一切の試験に関する情報が公開されておりませんので、ひょっとしたらこの「試験直前対策講座」を受講した受講生は、実は本試験の出来にかかわらず、「全員合格しているのではないか」とまで勘ぐってしまいます。まさに資格ビジネスってやつですね。この点からも、どうしてもこの団体・資格に対して不信感が湧いてきます。ちなみに2021年、第三回の「試験直前対策講座」はWEBでのオンライン受講になっているようです。

個人的な意見としましては、試験を受けて合格し、さらに講習を受けて登録までする価値がある資格であるかは非常に疑問です。全くの労働関係法や入管法の初心者が、最初の入り口として勉強する分には、有効な手段の一つであるとは思います。もっと本格的に専門性を身に付けたい場合は、この分野の専門国家資格である社会保険労務士や行政書士の取得を考えられるのも一つの選択肢ではないでしょうか。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。少しでも皆様の参考になれば嬉しく思います。

外国人雇用管理士試験公式テキスト