南アフリカ優勝で幕を閉じた、ラグビーワールドカップ2019日本大会

 2019年11月2日、南アフリカがイングランドを32対12で破り3回目の優勝、エリスカップを手にしました。南アフリカ代表史上、初めて黒人がキャプテンを務めました。シヤ・コリシ選手です。下記は優勝を決めた後のコリシ主将のコメントです。

 祖国は実に多くの課題に直面しています。しかし南ア国民は私たちを応援してくれました。みんなに感謝します。祖国はいま本当にたくさんの問題を抱えています。それぞれ違うバックグラウンドを持つ人たち、異なる人種からなるチームがゴールを目指して一つになれました。

 今日はどうしても優勝したかったのです。何かを成し遂げたかったら団結する、そうすればできることを祖国のために示したいと願っていたのです。(国民が一つになって応援してくれる)こんな南アを目にするのは生まれて初めてです。

 1995年の初出場初優勝が私たちに何かをもたらしたのは明らかです。祖国は大きな課題を抱えています。コーチは前の試合(ウェールズ戦)のあと、私たちが優勝を目指すのはもう私たちのためではない、祖国の人々のためにプレーするのだと奮い立たせてくれました。

 だからこそ何としてでも優勝したかったのです。応援してくださった皆さんに感謝します。タウンシップ(今でも貧困に苦しむ黒人居住区)で暮らすみんな、違法なバーやクラブで飲んでいるみんな、ホームレスのみんな、すべての地域のみんな、応援してくれてありがとう。

 南アフリカを心から愛しています。一つになって力を合わせればどんなことでもやり遂げることができるのです。

 いかがでしょうか。南アフリカが優勝して本当に良かったと私は心底思いました。思えばアパルトヘイトが撤廃され、南アフリカが世界の舞台に帰ってきた1995年のラグビーワールドカップ。自国開催となったこの大会で、南アフリカはオールブラックスを破り優勝を手にします。この時のメンバーに黒人選手はたった一人しかいませんでした。しかし今回は11人もの黒人選手がメンバーとして選ばれていました。

 単純に黒人選手が増えたから素晴らしいという訳ではありませんが、ずっと富裕層のスポーツだったラグビーが、黒人の層にも降りてきて、貧しくともラグビーができる環境があるということは素晴らしいことだと思います。

日本人とラグビー

 私は常々ラグビーというスポーツは日本人にぴったりのスポーツだと思っていました。競技人口こそ野球やサッカーなどに比べて少ないものの、その「濃さ」は圧倒的だと思います。いくつか挙げていきますと。

【ノーサイド】

 おそらく日本のラグビー関係者が一番好きな言葉ではないでしょうか。

 ご存じの通り、ラグビーでは試合終了のことを「ノーサイド」と言います。「試合が終われば敵味方がなくなり、お互いを称えあう」という感じです。ユーミンの歌のタイトルにもなったこの言葉ですが、実は試合終了を「ノーサイド」と言っているのはどうも日本ぐらいのようです。では他の国では試合終了を何と言っているか?そう、「フルタイム」です。なんとも味気ない。

【ワン フォー オール・オール フォー ワン】

 これは皆さんもよく知っている言葉でしょう。「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」です。小学校や中学校のクラスのスローガンで、必ずこの言葉を使ったクラスがありました。

【スクラム】

 この言葉も「大勢が力を合わせて一つになる」ことの代名詞ですよね。「スクラムを組んで頑張ろう!」みたいな感じで、これも「ノーサイド」と同じように学校のクラスのスローガンとして使われていましたよね。

【ラガーマン】

 これも海外では言いません。調べてみると和製英語のようです。英語では「rugby player」、ニュージーランドとオーストラリアでは「footy player」と言うそうです。

 「ラガーマン」は日本においてもちょっと特殊な言い回しのような気がします。何と言いましょうか、他の競技、サッカーや野球ではこのような呼び方はないと思います。なんか一目置いてますよね、ラグビーをやっている人には。

【スタンド オフ】

 「スタンド オフ」とはラグビーのポジションの一つで、背番号は10番で、2019年のワールドカップでは、田村優選手のポジションです。※各ポジションについてはこちら

10番はラグビーでは、いわゆる「司令塔」です。キッカーでもあります。おそらく日本人が憧れるポジションではナンバーワンではないでしょうか。

 ところがこの「スタンド オフ」、現在では日本ローカルな呼び名になってしまいました。ワールドカップのテレビ中継で、テロップやスーパーに時折選手の情報が表示されましたが、な、なんと「スタンド オフ」ではなくそこには「フライハーフ(FLY HALF)」と表記されているではありませんか。そうなんです、国際的にはもう日本人が憧れる「スタンド オフ」通称「スタンド」は「フライハーフ」という、かっちょ悪い呼び名で呼ばれているのです。これは結構悲しい。

 今回もう一つ気が付いたのですが、4番5番のポジションである「ロック」。15人の中で「もっとも強靭で頼りになる男のポジション」として、ニュージーランドの子供たちが最初に憧れるといわれるポジションなのですが、このポジションは現在国際的には「セカンドロー(SECOND ROW)」と呼ばれています。これも個人的には受け入れがたい呼び名です。
あと8番のナンバーエイト。かっこいい名前ですが、どうしてこうなったのでしょう。考えるのがめんど臭かったとしか思えません。

【早明戦:縦の明治、横の早稲田】

 今はここまで極端にチームカラーが露骨に出ることは無いのですが、ひと昔前には「縦の明治、横の早稲田」といわれた早稲田大学 対 明治大学の定期戦、通称「早明戦」。今も昔もスタンドがお客さんで埋め尽くされる大人気の一戦です。「フォワードの明治、バックスの早稲田」ともいわれ、ラグビー思想が真っ二つに分かれ、そしてぶつかり合うこの伝統の一戦は、単なるいちスポーツの戦いを超えた、哲学と哲学のぶつかり合いという性格がある一戦です。グランドを広く使い、相手を揺さぶり、翻弄する早稲田のラグビーと、ボールを持ったら「前へ!」、重戦車フォワードを全面的に押し出し最短距離を進み、力でねじ伏せる明治。お互いの意地と意地がぶつかり合うこの戦いに、たくさんの人々が魅了されてきました。

ラグビーボール楕円球

 楕円球であるラグビーボールはしばしば人生に例えられます。「ラグビーボールのように、人生はどっちに転がるかわからない」、我々が大好きなフレーズの一つですよね。

まとめ

 思いつくまま書かせていただきましたが、このように日本人は結構ラグビーを大切に思っています。ラグビーの精神は日本人の武士道の精神と相通ずる部分が非常に多く、中でも「規律を守る」「自己犠牲の精神」といったところは、震災時に日本人が見せた姿そのものです。こんな日本人向けのスポーツは他に存在しないと、私自身信じております。日本でラグビーがもっと人気スポーツになり、国技になってくれたらどれだけ素晴らしいだろうかと、本気でそう思う今日この頃でございます。

 今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。日本中を熱狂の渦に巻き込んだ、ラグビーワールドカップ2019日本大会の回顧録を終わりにしたいと思います。

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